さほど田舎暮らしでもなかったのですが、子供の頃の我が家では、お風呂は薪で沸かしていました。よく祖父を手伝って廃材をくべた覚えがあります。1970年代に入ってそのお風呂もガス式に改造、スイッチひとつでお湯が沸かせるようになり、ずいぶん便利になったなと感じたものです。だから薪ストーブの導入を決めたとき、そんな自分の肌感覚から「めんどうな薪ストーブ」との暮らしを少しは覚悟したのです。 ところがリフォームも完了し、知り合いと雑談の折、うちに薪ストーブがあることを話題に出すと、多くのひとは「リッチですね」とかさらには「ガウンを羽織ってブランデーですか」などと冗談めかして言います。自分が思っている以上に、薪ストーブに「ステータスシンボル」の印象を強く持たれているのには、正直戸惑いました。 思い返せば、薪ストーブはお金持ちの道楽、と感じさせるできごとがリフォーム計画中にありました。 それはネットで見つけた大阪の薪ストーブ業者に問い合わせをした時のことです。設置は2階、まっすぐ屋根を抜いての煙突計画であること、ストーブ用の床と壁の施工はすべてこちらで済ます、屋根の穴はこちらのリフォーム業者での作業、と伝え、ストーブと煙突設置のみの費用をなんとなくでいいので、と断って聞いてみると「100万ですかね」とあっさり即答されたのです。実はそのときすでに、お目当てのストーブと部材費用の計算も済ませていて、自分で設置するならこの三分の一くらいの費用でできるというのはわかっていたので、その慇懃な言葉の響きに、薪ストーブ販売業界の高級外車ディーラー然とした体質を察し「やっぱりめんどうだけど自力で設置しよう」と決意は固まったのでした。 自力でのストーブ設置をにらんで、廉価なストーブや部材を販売しているお店を訪ねたりもしました。なにしろ今まで薪ストーブの現物すら見たことないのですから、手探りながらの調査開始です。そのお店では、海外の高級薪ストーブと国内メーカーの廉価なものとでは、どのくらい違いがあるのかを聞いてみました。「車にたとえると高級車と大衆車の違い。高価なものはそれなりに高級な部品も使われているし、排煙対策も充実している。だからといって大衆車がだめということはない。基本性能でみれば大衆車でも充分、といえばわかるでしょ」と答えは明快。 ただ、お話しをうかがったお店のような業者さんは本当に少なく、ほとんどの薪ストーブ販売業者が「高級ディーラー」なのはたしか。きっちり施工や設置はしてくれて、有料でメンテナンスもお願いできるが、ただただ高価。エコだとかCO2削減だとかいいながら、大衆的立場で薪ストーブの施工と設置までしているお店はほとんどないのが現状なのだ。 業者さんのアドバイスを元に、自分で作った設計図。 いつも仕事で使っているグラフィックソフトで作成。 最終、業者さんにチェックしていただき部材を発注したのでした。 煙突部材は国産の普及タイプをチョイス。 意外に思われるかもしれませんが、煙突部材のほうがストーブ本体より高額になります。 壁や床に関しては、けっこう勉強しました。といってもネットでですが。 薪ストーブ設置に関して一番注意して対処が必要なのが「低温発火」という現象。 摂氏150度まで程度の温度でも、見えない壁内の木材が徐々に炭化して あるとき一気に燃え上がる、という怖い現象です。だから ストーブの背付近内と床内には木材は使用していません。 ストーブ本体は国産の鋼板製。 鋳物のものにくらべ、冷めるのは速いのですが、杉などの針葉樹も燃やせます。 欧米のものや国内メーカーがあつかう中国製ストーブの主流は鋳物製で、 冷めにくいのが利点ですが、燃やすと急速に高温になる性質の針葉樹系を燃すことは ストーブ本体が割れてしまう恐れがあり、基本できません。 だから廃材を薪として利用するなら、鋼板製で、ということになります。 ◎amick アーミック ストーブ設置時にはたいへんお世話になりました。廉価な薪ストーブや部材を販売している数少ないお店のひとつ。オリジナル鋼板ストーブもある。購入前提であれば相談にも応じもらえるところが自力設置派ユーザーには心強い。滋賀県彦根に実店舗がある。 ◎岡部工業所 鋼板製ストーブを製造販売。うちのストーブはここのオリジナル「ソロー 縦長タイプ」。原料高騰にもかかわらず、良心価格で薪ストーブを供給してくださっています。購入時にはわからないことを親切にいろいろ教えていただきました。 ◎ホンマ製作所 新潟にある国内最大手の薪ストーブメーカー。庶民派の薪ストーブ事情を知るならまずここから。ホームセンターで売られている煙突部材はたいていがここの製品。安価な中国製ストーブも扱う。最近ではペレットストーブというのも登場。
by pechkana
| 2012-01-19 19:09
| 薪ストーブ
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