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「アオイホノオ」の頃(全3回)
第2回 ファーストピクチャーズショー

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 ファーストピクチャーズショーは、1989年あたりまで、大阪芸術大学内で開催されていた8ミリ映画の映像イベントのことです。略してファーピクと呼ばれていました。映像計画学科(現:映像学科)に限らず、芸大生であれば誰でも参加することができました。「アオイホノオ」漫画では秋に開催、テレビドラマでは年2回開催、となっていましたが、実際は春恒例の五月祭に合わせた、年1回の開催であったと記憶しています(好評につき追加のアンコール上映はあったと思いますが)。実写、アニメを問わず映像作品であれば何でもOKで、上映時間が「3分間」というのが唯一の条件でした。デザイン学科だった私はこれには2度出品しました。
 出品が単位に関わる映像計画学科の人たちとは違い、こちらはけっこう気楽なものでしたが、自分の作品が上映される時は、さすがに緊張します。上映作品のクオリティーは様々で、観客からつまらない作品と判断されれば、「しょ~もなあ」「しょー」「しょー」などと吐き捨てるような厳しいヤジの大合唱です。まじめに作ってこの反応であれば、心が折れることまずは必至です。逆にウケる作品であれば、場内大爆笑や場合によっては拍手さえいただけます。己の才能を確認するという意味でいえば本当に怖いイベントです。そのあたりの様子は「アオイホノオ」中に、詳細に描かれている通りで、テレビドラマでも、その雰囲気はかなり忠実に再現されていたのではないでしょうか。それでもあえて違うところをあげれば、7号館1階ホールで行われた実際のイベントの映写環境は、ドラマのそれよりもっともっと立派なものでした。ホール2階部分の音漏れのしない分厚いガラスで仕切られた映写室から、最高クラスの映写機を使って、作った本人さえ見たことが無いような高品位な映像が、見上げる位置にあるスクリーンいっぱいに映し出されるのです。
 写真は私のファーピク1回目の出品作品です。80年のファーピクに出品しました。映写機さえあれば今でも観ることはできるはずですが、そのような勇気は持ち合わせておりません(笑)。実験的な映像作品でウケを狙って作ったわけでは無かったので、上映後の観客の反応は「アオイホノオ」のモユルの作品同様「う~ん」という感じで場内無反応でしたが、ともかくも「しょー」の大合唱にならず、心も折れず、やれやれでした。これを反省点に、次回はとにかくウケなければ!と、アホに徹した2年後の2作目では、場内大爆笑をいただきました。「アオイホノオ」のモユルが場内無反応だったことを悔い(次からは)「俺はアホでいかせてもらいます‼」と改心するのと似た心理であったわけです。



ネット検索で観ることができる「アオイホノオ」関連、自主映画作品

誰がいつアップしたのか、1980年頃の大阪芸大関連の8ミリ作品たち。
いつ無くなるかわからないので、リンクさせてはいません。
動画検索で探してみてください。

「じょうぶなタイヤ」
庵野秀明氏芸大時代の作品。ファーピクだったろうか、初めて観たときはびっくりした。「ルパン三世カリオストロの城」の影響アリアリではあるが、カークラッシュで生じた細かな破片を丁寧に動かしているところは「新世紀エヴァンゲリオン」にもしっかり受け継がれた彼独自の味わいである。

「金剛魔王」「金剛魔王2」
現在観ることができる希少な当時の実写作品。ファーピク締め切り2日前、アニメ作品の製作が全くはかどっていない「さかやん」のところに突如現れた救世主「金剛魔王」。はたしてさかやんの危機は回避されるのか⁉ 金剛魔王に扮するのは「ねこまたや」の名前で現在も活躍されているアニメーターの清積紀文氏。動画のコメントに「清積紀文氏が作った」などと見られるが、実際の監督は劇中の「さかやん」その人である。ファーピクで好評を得て「金剛魔王2」が作られた。といってもフィルムをコピーして1の映像に別台詞をあてただけである(笑)。撮影が行われた場所は、俳優の筧利夫も当時暮らした、芸大近くの内田学生マンション。

「DAICON 3 オープニングアニメ」
「エヴァ」のガイナックス誕生のきっかけになった、歴史的8ミリアニメ。第三回大阪SF大会のオープニング用に作られた。詳細は「アオイホノオ」を読まれたし。「あの宇宙の戦士が動いてる‼」初めて観たときの感動は忘れられない。学校で、友人の下宿で、何度観たことだろうか。芸大祭(学園祭)にて教室を借りてのアンコール上映時には、私が作った実写の自主映画を抱き合わせで上映してもらった。画質の悪いテレシネビデオではなく、オリジナルままのフィルム上映で観ることができたのは、今にして思えば幸運なことである。

「DAICON 4 オープニングアニメ
DAICON 3 オープニングアニメのメンバーを中心に、前回のDAICON 3から2年後の第四回大阪SF大会用に作られた。あれから2年の間にプロのアニメ製作も経験した庵野氏の手腕は確実にアップ。DAICON 3アニメのパワーアップしたリニューアルから始まる憎い演出がうれしい。きわめてマニアックな作品にもかかわらず、業界内での注目度は高く、2005年には、伊藤淳史、伊東美咲主演のフジテレビ制作のテレビドラマ「電車男」のOPに、エレクトリック・ライト・オーケストラの楽曲ごと引用された(オマージュたっぷりのオリジナルアニメとして)。ちなみにこのOPアニメを製作したアニメ製作集団のGONZOの設立者のなかにはDAICON 4アニメに参加した前田真弘氏がいる。

「愛國戦隊大日本」と関連作品「仏教戦隊ブッダマン」「銃士戦隊フランスファイブ」
戦隊特撮物のパロディー作品。DAICON3とDAICON4の間の2年間に上記の同メンバーを中心に、これもSF大会用に作られた。サブタイトルは「びっくり‼ 君の教科書もまっ赤っか!」。このころからぼちぼち世間を賑わし始めた歴史教科書問題を受けたかどうかは定かでないが、アホ作品ゆえ、問題視せず大目に見てやってほしい(笑)。書店員に化けた敵戦闘員役に若かりし頃の赤井孝美氏が見て取れる。ちなみに、敵戦闘員のコスチュームに「アオイホノオ」テレビドラマにもレプリカが登場したあのダサいと当時大不評だった緑色の芸大ジャージ(芸大体育授業では着用必須であったが。現在は廃止。近年は「芸ジャー」の愛称で親しまれていたらしい)が採用されている。話は逸れるが、山本美月ちゃんのようなモデル出身のかわいい子がセクシーにあの芸大ジャージを着こなす日が来るとは! 「アオイホノオ」ドラマのブルーレイボックスは必ず買おうと決めている。……で、この「大日本」に触発されたのかどうか定かで無いが、京都は花園大学から生まれた作品に「仏教戦隊ブッダマン」というのがある。なお、さらに影響は近年海外にも波及。パリのオタク達によって作られた「銃士戦隊フランスファイブ」(France FiveでYouTube検索すると見つけやすい)のクオリティーはかなりなもの。これは必見である。しかも日本語のオリジナル主題歌までモノにしている! 恐るべしフランスのオタク!




関連映画紹介
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ジブリ作品に決して見劣りしない
超絶クオリティー!
映画ファンにぜひとも観てもらいたい
アニメだけど、実はアニメらしくない映画

「王立宇宙軍 オネアミスの翼」(1987年作品)

制作:ガイナックス 原案・脚本・監督:山賀博之

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 DAICON3&4オープニングアニメの面々が、その後プロとして、初めて制作した本格劇場映画である。そして北野武映画の制作でお馴染みのバンダイビジュアル設立以前、玩具メーカーのバンダイが初めて映画製作に乗り出した記念碑的作品でもある。「エヴァ」の制作会社ガイナックスはそもそも、この作品の制作のために岡田斗司夫を中心に設立された会社である。当時アニメ映画としては破格の制作費を掛けて公開されたが、興行は思いのほか不振に終わった。宣伝材料に出てくるキャラクターがそれ以前からアニメファンの間で人気のあった「超時空要塞マクロス」などと混同されたのか、いわゆるオタク系を忌み嫌う映画ファンからは敬遠され、「可愛い子が出ていないから」という理由で、頼みのアニメファンからもそっぽを向かれてしまった、まったく不遇な作品である。
 だがしかし興行の不振に反して、作品自体は、アニメの枠を見事に越えた「奇跡の1本」と言ってしまって差し支えないくらい実に素晴らしい。何しろあの手塚治虫を知らないアニメ&漫画音痴の山賀博之氏(※1)が原案・脚本・監督をつとめた映画であるから(※2)かなり既存のアニメとは趣が異なるのは自明の理であろう。
 物語は「ゲド戦記」や「指輪物語」同様、地球では無い架空の世界。地球にたとえると1950年代末くらいの時代、東欧諸国を思わせるとある国が舞台である。学校での成績が振るわず、夢に見ていた水軍のパイロットになれなかった青年シロツグは、仕方なく宇宙軍に入隊。世界初の有人宇宙飛行計画に関わっていくという物語。「何をする軍隊なの?」「宇宙には戦う敵でもいるのかしらフフフ」などと世間では陰口を叩かれ笑われる落ちこぼれ集団という設定の宇宙軍を、アニメではいかにもありがちなギャグ風にまとめず、嫌味なくフラットに描いているところに好感が持てるし、主人公の設定を、ちょうど芸大生くらいの、世間的に言ってしまえば苦労知らずの「おぼっちゃん」くらいに持ってきているあたり「身に覚えのないことは描けない」と言わんばかりで、いっそ清々しい。主役の声優に味のある森本レオを迎えたのも大正解だし、多くのスタッフ達と知恵を出し合って構築したであろう、ちょっぴりダサかわいい東欧テイスト風のきめ細かな世界構築が、なんともいえない郷愁感を誘い、もはや目頭さえ熱くなる。
 そして劇中音楽が秀逸。「戦場のメリークリスマス」以来勢いづいていた、坂本龍一を音楽監督に迎え、最近の犬童一心監督作品でもお馴染み、元「ゲルニカ」の上野耕路などの精鋭が辣腕を振るって紡がれた音楽の数々は、のちに坂本が米アカデミー賞音楽賞に輝いた(連名であったが)「ラストエンペラー」に決して引けを取るものではないと、個人的には思っている。
 作画のクオリティーだが、DAICON3アニメに見られた、アマチュアならではの拙さは全くないのでご安心を。ガイナックスの面々に加え、彼らの情熱にほだされたプロの若手スタッフ達が、それ相応の資金を得て、その上で経済活動以上のマニアックすぎる働きを見せたであろう絵作りはまさに超絶。「紅の豚」の劇中「徹夜はいかん」とポルコ・ロッソに思わず言わしめ、アニメ業界の労働環境に憂慮していた宮崎駿に、おまえら何てことしてくれるんだ!と叱られたとか、叱られなかったとか。
 この映画は私の妻も大好きな作品。ジブリ作品以外のアニメは観たことがない、そんな映画ファンに是非、観ていただきたい1本である。


※1「アオイホノオ」中で描かれていた有名な逸話。SF大会会場にてオープニングアニメ製作者たちの楽屋をねぎらいに訪れた漫画家の手塚治虫氏の立ち去り際「今の誰?」と隣のメンバーに聞いてしまった山賀氏。

※2 山賀氏はけっこうな映画通ではないか?「七人の侍」のエピソード、菊千代の喧嘩シーンにおけるユーモラスな描写が、本作中に引用されていることから、そう推測される。

(つづく)
by pechkana | 2014-10-10 15:04 | 映画・書籍など | Comments(2)
Commented at 2017-06-03 03:53 x
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Commented at 2017-06-03 04:03 x
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